障害者の就労を支援する市内の作業所
「株式会社WISH」代表の山田賢治(やまだけんじ)さんに
だるまの張り子紙作りに携わるようになったきっかけや
紙作りへの思いなどをお伺いしました。


三原だるまの張り子紙作りを始めたきっかけは何でしょうか?

最初のきっかけは、三原観光協会の方から福祉施設で張り子紙を作ることはできないかという相談を受けたところからでした。うちは元々紙作りなどはしていなかったのですが、他施設ではハガキや名刺などの紙を作っている場所があるんです。そこで張り子紙作りができないかと思って、最初はパイプ役として他施設に話を持って行ったんですけど、なかなか難しいという返答をいただいて……。どこら辺が難しいのかを自分も分かっていなくて。紙すきとは、というところから全くの分からない中で課題が見えないので、実際に取り寄せている埼玉の紙漉き職人の方に会いに行って、分からないところは直接見て、教えてもらい福祉施設でも本当にできないかということを整理したいと思いました。

実際に職人さんから教わって見て感想としてはどうでしたか?

こういう感じでやってますよ、という一通りの工程や道具を見させてもらったんですけど、私たちは和紙作りの基本とか分かっていないので、知らない中で専門の道具を揃えることは難しいと思いました。また、当時創業したばかりでもあったので、ワンフロアの事務所という限られた空間での紙作りができるかどうかを考えました。ここでもできたら他施設でもできるだろうということで、はがきや名刺サイズとどう違うのかなとか、試行錯誤しながら実際に張り子紙作りを始めました。

紙作りで工夫したところはありますか?

張り子紙はある程度濡らしても破れない強度をだせるよう工夫しました。埼玉の職人の方は、和紙の切れ端を利用して強度を増した張り子紙を作っていたようですが、こちらではなかなか和紙が手に入らないので、身近に入手できるもので代用できないか色々試作しました。WISHのスタッフやメンバーが携われるように、紙作りの道具なども工夫して揃えて、少しずつですが仕組みを整えていきました。この方法を他施設にも伝えて見たんですけど、やはり作ることは難しいという返答をもらい、結果としてWISHで作ることになりました。

紙作りを本格的にWISHさんで始めることになり、心境としてはいかがでしたか?

最初はパイプ役として動いていたので、まさか紙を作ることになるとはというのが正直なところです。ですが、うちでできる範囲のことはやっていこうかなという気持ちで取り組んでいます。


現在三原だるま全ての紙を作られているのでしょうか?

紙の厚さや大きさなど、紙の状態が職人によって違うようだったので、今は佐木島でだるま作りをされている方の紙を作っています。また、WISHは通常のお仕事として外部の会社からの請負業をしているので、その合間に並行して、少しずつ張り子紙を作ってます。

紙作りの工程を教えてください。

まず、紙の素材となるパルプ紙や繋ぎとなる繊維を決まった分量に小分けするところから始めます。次にそれらをちぎったりして細かくします。あとは漉ける状態にするために、ミキサーを使用して水と細かくした素材を攪拌していきます。液体状にした素材は新聞見開きサイズ半分の大きさの木枠に流し込んで形成します。最後にしっかり乾燥して完成です。 以前使用していた紙により近づけるために、さらに工夫をしなくてはいけないので、これからも試行錯誤を続けていきたいです。

これからの活動としての想いについて教えてください。

携わったからにはしっかりと作っていきたいという想いと、何かのご縁で始まった張り子紙作りも今では8年目と続いているので、それが生きがいや、やり甲斐につながっていくといいなと思います。また、なかなか枚数を量産できない現状についても、もう少し増やせるように動かないといけないなと思いつつ、ようやく紙の生産を増やすための体勢が整い始めたところでもあります。

ー2021.12.4