三原だるまは江戸時代に疫病を払うものとして作り始めたと云われています。後に城下町で下級武士の副業として発展しました。いつの時代からか三原の伝統行事である「神明市」で三原だるまを売るようになり、「神明市」は別名「だるま市」とも呼ばれ三原の名物にもなっています。現在も神明市では三原だるまが販売されているだけでなく、たくさんの達磨をみることができます。

だるま作りは三原の人形師によって近代まで続いたと云われています。しかし、第二次世界大戦の頃には、その姿は消えてしまいました。後に、三原小学校の校長を務めた故・久保等さんが中心となり、1980年代に「三原だるま保存育成会」が立ち上げられ、三原だるま作りが再開しました。これをきっかけに三原にはだるまの姿が戻ってきました。

2014年当時、埼玉県の和紙職人から仕入れていた材料となる張り子紙が入手困難となり、三原だるま作りは一時的に中止されました。その張り子紙は、ごわごわとした厚手の和紙で、三原だるまの手作りの温もりを生み出していました。今まで通りに三原だるまを作り続けるため、その張り子紙の新たな仕入れ先を探しましたが、なかなか見つけることができませんでした。

張り子紙不足の窮地を救ったのは、障害者の就労を支援する市内の作業所「株式会社WISH」でした。代表の山田さんは埼玉県の職人の元で製紙技術を見学した後、張り子紙の作る方法を模索しながら徐々に生産を始めました。現在は作業所で制作された張り子紙を中心に三原だるまの生産は続けられています。

現在も、年に１度の神明市に出品するだるまを「三原だるま保存育成会」により、一つ一つ丁寧に制作しています。一度は途絶えた三原だるまも、たくさんの人々に支えられ民芸品として三原の名産となっています。